オーガニック牛乳は健康的?安全?科学的な根拠を考えてみる…

食のコラム
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オーガニック食品と聞いてどのようなイメージを持ちますか?

オーガニック食品と言われると野菜のイメージが強いと思うのですが、最近はオーガニック牛乳のようなオーガニックな畜産物も注目を浴びています。

オーガニックとつくと何となく健康にいい、栄養価が高そうと漠然と感じると思います。

しかし、実際のところ本当に健康的で栄養があるのでしょうか。今回は、オーガニック牛乳の安全性や栄養について科学的な根拠を調べてみました。

 

オーガニック牛乳は普通の牛乳と何が違う?

オーガニックなんちゃらや有機なんちゃら、という言葉を最近よく聞きますが、オーガニックや有機とは具体的にどんな意味を表すのでしょうか。

まずは有機野菜やオーガニック牛乳が普通の食品と何が違うのかについて見ていきます。

有機食品の定義とは?

参考 : 農林水産省 有機食品の検査認証制度

有機食品とはどういうものかについて知るには、農林水産省のホームページを見るのがよいでしょう。農林水産省は有機農産物の生産基準として下記のような基準を設けています。

  • 堆肥等による土作りを行い、播種・植付け前2年以上、及び栽培中に(多年生作物の場合は収穫前3年以上)、原則として化学的肥料及び農薬は使用しないこと
  • 遺伝子組換え種苗は使用しないこと

この基準を満たす生産者のみが有機食品を名乗る事ができます。

ちなみに、有機=オーガニックであり二つの言葉に違いはありません。オーガニックというと少しおしゃれな感じがして、若者の購買欲をそそるとかはあるのかもしれませんが…

そして、上記の基準を満たした農作物の生産者はJASマークの申請を行います。登録認定機関が生産者を調査し、適切であれば有機食品として認定されます。スーパー等で有機食品を名乗るにはこのJASマークが必須になります。

そして、有機食品の中でも有機畜産物は下記のような基準があります。

  •  飼料は主に有機飼料を与えること
  •  野外への放牧などストレスを与えずに飼育すること
  •  抗生物質等を病気の予防目的で使用しないこと
  •  遺伝子組換え技術を使用しないこと

オーガニック牛乳の場合はオーガニック畜産物の一種なので上記の条件を満たしている事になります。

以上が有機野菜やオーガニック畜産物と名乗るために必要な事ですが、これらの基準を満たすことでどんなメリットがあるのでしょうか。次に、有機食品の環境へのメリットと消費者へのメリットについて見てみます。

有機食品は普通の食品に比べて何が優れている?

有機食品のメリットと聞かれると、消費者の立場としては安全性や高い栄養価がパッと思いつくのではないでしょうか。無農薬で遺伝子組み換えをせずに育った飼料で育った牛から搾乳した牛乳は安全そうなイメージがあると思います。また、ストレスフリーで育った育った牛のお乳は栄養価が高そうと何となく思うのではないでしょうか。

これらの、消費者が漠然と感じているメリットについては次の章で科学的な根拠を詳しく解説していきます。

2つ目のメリットして環境へのメリットがあります。有機野菜は化学肥料や殺虫剤、殺菌剤、除草剤などを一切使用しません。環境への負荷が小さいです。化学肥料などは自然の力で分解されにくい成分も多く、環境に蓄積されることがあります。それらの成分が環境に悪影響を与えない保証はありませんし、蓄積された物質が多くの動植物や人間に回ってきて大きな被害を引き起こす可能性もあります。動物のたい肥や、植物由来の殺虫剤を使う有機農業は環境への負荷が小さいと言えます。

また、オーガニック牛乳の場合、地域で育てたエサを使い牛を育て、牛の排泄物を肥料として利用して野菜作りをする…という循環型社会の実現にも繋がります。持続可能な開発が叫ばれる今、オーガニック牛乳の様なオーガニック畜産物は非常に有効な手段ではないでしょうか。

株式会社 明治 公式ホームページ

私は、大学時代馬術部に所属していたのですが、毎日一頭の馬から数十キロもの馬糞が排泄されます。普通に排泄物を処理しようとすると産業廃棄物扱いになるので、処理費用がばかでかくなります。そのため、地域の農家さんのところへ馬糞を運んで肥料として有効活用していました。また、自分でも馬糞を肥料としてニンジンを栽培して馬にあげたりもしていました。と、循環型社会の実現にわずかながら貢献していました。(笑)

 

オーガニック牛乳の安全面と栄養価

オーガニック牛乳という言葉は日本ではあまり聞きなれずスーパーで見かける事はほとんどないと思いますが、欧米ではすでに広く広まっています。Milk Processor Education Program(MilkPEP) という団体の2013年の報告によれば、「2012年のアメリカのオーガニック牛乳の販売額は牛乳全体の4%を占める。」とのことです。

そのため、欧米ではオーガニック牛乳の研究が日本に比べ活発です。そこで、オーガニック牛乳の安全性についての研究と栄養価についての研究を調べてみました。

オーガニック牛乳は普通の牛乳より安全?

一部の国では家畜の病気を予防するために抗生物質をエサに混ぜ込んでいるという話を聞いたことがあるでしょうか。抗生物質は本来細菌に感染した時に細菌を排除するために使うものです。しかし、その抗生物質を病気にかかっていないときにも使用することで大きな問題が生じます。

それは薬剤耐性菌の問題です。抗生物質を使うことで細菌を排除することができるのですが、頻繁に使っているとその抗生物質に耐性を持った菌が出現する可能性が高くなります。病気にかかった時に、病原菌に有効な抗生物質がない…となってしまえば大きな問題です。

2019年にサイエンス誌に投稿された動物への抗生物質投与に関する論文によると、開発途上国において重要な食糧である鶏や豚から採取された細菌のうち薬剤耐性菌の割合が、2000年から2018年の間に3倍に増加したというデータがあります。牛肉においては約2倍に増加しています。

世界で使用されている抗生物質のうち3/4は家畜の病気予防のために使われていると言われており、この傾向は特に発展途上国において顕著です。発展途上国では、食の安全よりも十分な量の食糧供給が優先されます。特に、インド北東部や中国北東部、トルコ東部、エジプト、ブラジル北部などの地域で薬剤耐性菌の出現が確認されています。

家畜の体内にはカンピロバクターやサルモネラ菌、病原性大腸菌など人へ悪影響を与える細菌も多く存在します。薬剤耐性菌が家畜から直接人へ感染する可能性もありますし、環境中や他の動物を介在して間接的に人に回ってくる可能性もあります。

上記の論文は肉中の薬剤耐性菌の増加についてなので、牛乳中の薬剤耐性菌については定かではありませんが、抗生物質漬けになった牛から搾乳した牛乳を飲むのは気持ちのいいものではないと思います。

ここまで家畜への抗生物質投与の問題で不安を煽ってきましたが、日本においてはそこまで心配しなくても大丈夫です。日本の牛乳は自給率が100%ですし、日本の牛乳は厳しい規制のもとで高い品質が守られています。

抗生物質については「乳等省令」という法律で厳しく規制されており、飼料への添加は禁止されています。牛が乳房炎、肺炎などにかかったときやケガをしたとき、治療のために抗生物質を投与することは認められていますが、牛のえさに加えることはありません。また、乳に抗生物質が残留している期間は決して出荷しないよう定められています。

引用 : 一般社団法人 Jミルク

さすが、日本の乳業業界ですね…

安全面においては日本ではオーガニックでない牛乳もある程度の品質が保証されているので、オーガニック牛乳が大きく優れているとは言い切れないかもしれません。

安全面においては牛の飼育についてもそうですが、2000年の雪印集団食中毒事件のように搾乳後の品質管理等で問題が起きる場合も怖いですよね…

オーガニック牛乳は栄養価が高い?

オーガニックとついていると何となく栄養もありそうと感じるかもしれませんが、オーガニック牛乳の場合はどうでしょうか。ここでは、2013年にワシントン州立大学が行ったオーガニック牛乳の栄養価に関する論文を見てみます。

この論文ではオーガニック牛乳と普通の牛乳を合わせて約400サンプルを検証し、特にω-6脂肪酸とω-3脂肪酸の量に注目しています。DHAやEPAなどに代表されるω-3脂肪酸は動脈硬化の予防、血中中性脂肪の低下、不整脈の予防などの効果があり健康に良い油と言われており摂取することが推奨されています。ω-6脂肪酸も体に必要な栄養ですが、普段の食事ではω-3脂肪酸が不足しがちでω-6脂肪酸を過剰に摂取しがちになります。

ω-6脂肪酸とω-3脂肪酸の理想的な比率は 2.3 : 1 と言われていますが、普通の牛乳ではこの比率が5.8 : 1 となっています。しかし、オーガニック牛乳ではその比率がちょうど 2.3 : 1 と理想的な比率となっています。これは、オーガニック牛乳を作り出す牛は普通の牛に比べて、健康によりよいエサを与えられているためだと考えられています。狭い牛舎の中で麦や大豆などの濃厚飼料を与えるのではなく、放牧してより自然な環境で牧草を食べさせることでω-3脂肪酸の量が増えると多くの研究で分かっています。

実際に、普段の食事の牛乳をオーガニック牛乳に変えたことでω-6脂肪酸とω-3脂肪酸の比率が改善されたという実験結果も示されています。

 

まとめ

いかがだったでしょうか。オーガニック牛乳は普通の牛乳に比べて安全面でのメリットはそこまで大きくない(日本において)ですが、栄養価の高さには期待できます。

消費者としてのメリットもそうですが、オーガニック牛乳に限らずオーガニック食品を買う事の最大のメリットは持続可能な開発や循環型社会への貢献に繋がることではないでしょうか。日本でオーガニック牛乳はまだ一般的でなく、値段も非常に高いです。1Lで500円くらいするそうです。それでも、生産者への応援の気持ちを込めてもし見つけたら買って見てはいかがでしょうか。楽天でオーガニック牛乳飲み比べセットが売ってるみたいですね。

私もまだ飲んだことがないので一度挑戦してみたいです。とりあえず、牛について書いていたら牧場に行きたくなって来たので、近日中に近くの牧場に搾りたて牛乳でも飲みに行こうかな🐄🐄🐄

 

参考資料

農林水産省 有機食品の検査認証制度

株式会社 明治 公式ホームページ

Milk Processor Education Program

WIRED Farm Animals Are the Next Big Antibiotic Resistance Threat

一般社団法人 Jミルク

ワシントン大学 Researchers see added nutritional benefits in organic milk

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