野菜は茹でるとどうして変色するのか?葉物野菜の茹で方を解説

食品科学
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野菜、特にほうれん草や小松菜のような葉物野菜を茹でた時に変色してしまった経験はないでしょうか。

葉物野菜が変色するには科学的な理由があります。理由を知る事で普段の調理の幅が一段と広がります。

この記事では、

  • 野菜を茹でると変色する理由
  • 葉物野菜を鮮やかに茹でるために気を付けること

を解説していきます。

 

葉物野菜を茹でると変色する科学的な理由とは?

ほうれん草や、小松菜、モロヘイヤ…

このような茹でて食べることが多い葉物野菜…

茹でる事で野菜の色が変わってしまう事があります。簡単な方法で変色を防ぎ葉物野菜の緑色を維持する方法があります。

方法を知る前に、まずは葉物野菜が変色する原理について少し解説していきます。これだけでも頭に入れておくと、茹で方も忘れにくいです。それでも、今すぐ茹で方を教えてほしい…と言う場合でしたら、ここの原理については飛ばして読み進めてください。

今回の記事は特に葉物野菜の変色について書いています。また、ブロッコリーやアスパラガスなどの緑色の野菜についても葉物野菜との比較で書いていきますが、ニンジンやじゃがいものような根菜類については別の記事で書こうと思います。

野菜の緑色はクロロフィルの色

葉緑体という言葉を聞いたことがあるでしょうか。

葉緑体は植物が持つ構造体(細胞小器官)の一つであり、植物が光合成を行うのに必須なものです。光合成とは光を吸収して、植物が生育するために必要なエネルギーとを作り出すだします。

つまり、植物は光を吸収しているのです。この光の吸収に関わる成分がクロロフィルなのです。

少し科学的な用語が多いかもしれないですが、クロロフィルはこの後も出てくるのでクロロフィルだけは覚えておいてください。

太陽光は白色なのですが、クロロフィルが緑色以外の色を吸収し、緑色のみを反射するので、反射された光が私たちの目に入り植物は緑色をしていると感じるのです。

ここで、もしクロロフィルの形が変わったら植物の色はどうなるでしょうか。

クロロフィルの固いは温度やpH、酵素などの様々な条件によって形を変えます。そして、植物の色を司るクロロフィルが形を変えることで、植物の色も変化するのです。次から、条件による変色の違いについて見ていきます。

ちなみに、植物の色素にはクロロフィル以外にもカロテノイドや、フラボノイドなどの他の色素も含まれています。緑色の野菜はクロロフィルの色合いが強いだけで、これらの他の色素が含まれていないわけではないです。

クロロフィルは酸により変色する

一つ目の変色の原因は酸と加熱によるものです。

葉物野菜を酢やしょうゆなどと一緒に茹でて変色してしまったことはないでしょうか。

それは調味料に含まれる酸が原因です。

酸とは水素イオンが多いということです。この水素イオンが重要な働きをします。

先ほど紹介した緑色の成分であるクロロフィルはマグネシウムイオンと結合して存在しています。しかし、水素イオンが高濃度の状態で加熱する事でクロロフィルからマグネシウムがはずれてしまいます。代わりにマグネシウムイオンがもともと存在していた場所に水素イオンが入り込みます。

クロロフィルはマグネシウムイオンとの結合がなくなると、フェオフィチンという黄褐色を呈するようになります。

以上が、酸の存在下で野菜を茹でると変色してしまう理由です。

クロロフィルをアルカリ処理することで鮮やかになる

野菜を茹でる時に重曹を加えると野菜の色が鮮やかになる…というのは料理をする人にとっては有名な技術です。

重曹をなぜ加えるかというと、ゆで汁をアルカリ性にするためです。アルカリ性は酸性の逆ですね。酸性の状態の食品はたくさんあるのですが、アルカリ性の状態の食品はほとんどないです。そのため、アルカリ性にするには重曹という普段料理にあまり使わないものを使う必要があるのです。

クロロフィルにアルカリ処理をすることで、クロロフィルは一部が分解されクロロフィリンという鮮緑色の物質に変化します。(専門的にはクロロフィルの炭素鎖が連なったフィチル基という部分と、メチル基という部分が脱離します。)

鮮緑色…鮮やかな緑色は見た目が良く、きれいな緑色は煮物などの上にちょんっとおいて華やかさを加えます。

以上がクロロフィルのアルカリ処理の原理です。

ナトリウム・鉄・銅によってクロロフィルは安定化する。

葉物野菜を茹でる時に塩を一つまみ加える…

なぜ塩を加えるかというと、塩の下味をつけるという理由もありますが、色の観点から言うと緑色を維持するため、という理由もあります。

クロロフィルはマグネシウムと結合していて、酸処理・加熱によってマグネシウムが外れてしまうといいました。

しかし、マグネシウムが結合している部分に、ナトリウムイオンや鉄イオン、銅イオンが結合すると、クロロフィルの構造が安定化します。マグネシウムは外れやすいのですが、これらのイオンはマグネシウムに比べ外れにくいのです。

ナトリウムイオンとは食塩に含まれているので、食塩を少し加えて葉物野菜をゆでる事で色の安定化に繋がります。また、鉄イオンや銅イオンもクロロフィルの安定化に関わるので、鉄鍋や銅鍋で野菜を茹でる事で鮮やかな緑色を維持しやすいとも言われています。

 

葉物野菜を鮮やかに茹でるために気を付ける事とは?

ここまでで、葉物野菜を茹でる事で変色する原理についてはある程度理解したと思います。

そこで、この原理を踏まえたうえで葉物野菜の様なクロロフィルを多く含んだ緑色野菜の茹で方について見ていきましょう。

野菜の茹で方① ゆで汁に塩を2~3%入れる

野菜を茹でる時の一つ目のポイントとしては塩を加えるという事です。

上で説明したように、塩を加えることで野菜の緑色色素であるクロロフィルが安定化します。そのため、加熱でクロロフィルの構造が変化しにくくなりクロロフィルの緑色がキープされやすいのです。

ここで大事になってくるのは、塩の量です。1%程度の濃度ではクロロフィルの安定化は起きないそうです。2~3%程度の塩分濃度が必用になります。

海水の塩分濃度が3.4%程度なので、3%の塩分が含まれているとかなりしょっぱくなります。

野菜の緑色を大事にする場合は2~3%の塩分を加える必要がありますが、野菜によっては塩分を加えすぎる事で塩味が強くなりすぎる場合があるので、塩分量については適宜注意が必要になります。

野菜の茹で方② 野菜の5~10倍量のお湯を用意する

野菜を茹でる時に、鍋いっぱいに水を入れて沸騰するまで待つ…

この手間を面倒だと考えたことないですか?

少量の水で茹でれば大きな鍋を使わなくてもいいし…

などと思ってしまいますが、大量のお湯で茹でるのには理由があります。

まず、お湯の量が少ないと野菜を加えた時に温度が下がりやすくなります。温度が下がると茹で時間の増加に繋がってしまします。

また、野菜を茹でる事で野菜に含まれている水溶性の酸がお湯に溶け出します。酸が存在するとクロロフィルが黄褐色のフェオフィチンに変化しやすいので好ましくないです。そこで、お湯の量を増やす事で酸の濃度を出来るだけ小さくするのです。

野菜の茹で方③ 蓋をしないで茹でる

3つ目の注意点は鍋に蓋をしないで茹でるというものです。

この理由も酸が関係してきます。

水を沸騰させると蒸発していくように、野菜から溶け出した酸も加熱すると蒸発していきます。このような揮発酸は蓋をしていないと飛んでいけるのですが、蓋があると蒸発してもお湯に戻ってきてしまいます。

そのため、野菜を茹でる時には蓋をしない方が良いのですが、蓋をしないことによりデメリットが一つあります。野菜から揮発する成分は栄養素もあるという事です。

特に水溶性のビタミンCはゆで汁から揮発しやすく、蓋をしていないときと蓋をしている時では、後者の方がビタミンCの残存量が多いそうです。まあ、栄養素を残したいなら茹でるよりレンチンした方が水に栄養素が溶け出さないのでベターなのですが…

野菜の茹で方④ 沸騰したお湯で適切な時間茹でる

出典 : 食品と色

4つ目の注意点は沸騰したお湯で適切な時間茹でるというものです。

まず大事な事が自ら茹でるのではにく沸騰したお湯で茹でるという事です。

基本的な分類として、土より下になる根菜類は全体に火が通るように水から茹でます。

一方、土より上になる葉菜類や果菜類はお湯から茹でます。これは出来る限り茹で時間を減らして、クロロフィルの緑色が退色するのを防ぐためです。

また、茹ですぎないために適切な茹で時間を知っておくこと大事です。

上の表に代表的な野菜の茹で時間をまとめましたので参考にして下さい。

さらに、ほうれん草や小松菜などの葉物野菜は茎の部分を最初に茹でる事をおすすめします。最初に茎の部分だけを1~2分茹で、その後葉の部分を加えさらに1~2分ほど茹でる事で、葉の茹ですぎを防ぐことが出来ます。

野菜の茹で方⑤ 茹で終わった野菜はすぐに冷ます

最後の注意点は茹で終わった野菜はすぐに冷ますという事です。

茹で終わった後に、余熱が残っていると野菜の色褪せが進んでしまいます。そこで、水や氷水に野菜を浸したり、うちわであおいで余熱を飛ばします。

この際に、水や氷水などの水冷が適している野菜と水冷が必要ない野菜を上にまとめました。

簡単に分類すると、葉物の野菜は余熱によるダメージが大きいので茹でた後は水や氷水などでサッと冷やす方がよいです。

一方、ブロッコリーやさやいんげんは急冷する必要性は少なくうちわであおぐなどして冷まします。

水にさらすことで退色を防止できますが、栄養素は水に流れ出ていくので、長時間水にさらさないように注意が必要です。

 

まとめ

野菜、特に緑色をした野菜に茹で方について書いてきました。

鮮やかな緑色をキープするために重要な事を一文でまとめると…

塩を加えたたっぷりの沸騰したお湯で適切な時間茹で、冷却する。

野菜の色について興味を持ったら下の参考資料も見てみて下さい…

 

参考資料

片山侑、田島眞、食品と色、光琳選書 

高宮和彦、色から見た食品のサイエンス、サイエンスフォーラム 

中村宜督、榊原啓之、室田佳恵子、エッセンシャル 食品化学、講談社(2018)

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