「人参はβ-カロテンがたっぷり入っているから健康に良い…」
このような話を聞いたことがあるのではないでしょうか。
なぜβ-カロテンは健康に考えたことがあるでしょうか。
β-カロテンとはカロテノイドという成分の一種です。
この記事では、
- カロテノイドの健康への効果
- カロテノイドを効率的に摂取するための調理法
これらについて解説していきます。
目次
食品の色素であるカロテノイドとは
出典 : 食品と色
カロテノイドという言葉を聞いたことがあるでしょうか。
人参にはβ-カロテンが多い、トマトにはリコピンが多い、甲殻類にはアスタキサンチンが多い…
このような成分の名前を聞いたことがあるかもしれませんが、これらはすべてカロテノイドという色素成分の一種なのです。
「~オイド」というのは「~に見える」、「~形の」という意味なので、カロテノイドというのはカロテンのような成分という意味です。さらにカロテンはカロテノイドが豊富に含まれているキャロットに由来すると言う事を知っておくとカロテノイドがどんな成分か思い出しやすいです。
カロテノイドは植物や微生物は生産する事が出来るのですが、我々人間を含む動物は体内で作り出す事が出来ないので、食事から摂取する必要があります。
カロテノイドは体内で分解されることでビタミンAに変換されます。このようなビタミンAに変換される物質をプロビタミンAと呼びます。
多くのカロテノイドがプロビタミンAとして機能しますが、その中でも特に重要なのが上の図の上段に示した、β-カロテン、α-カロテン、クリプトキサンチンの3成分が重要とされています。
この中でも特にβ-カロテンの効果が大きいという事でβ-カロテンを摂取しようと謳われるのです。
カロテノイドはビタミンAに変換されることで機能を示す場合もありますが、変換される前のカロテノイドの状態でも多くの効果が知られています。
それではその効果について見ていきます。
カロテノイドの健康への効果とは
カロテノイドの効果としては上に示したようなものが知られています。
これらの効果の根本的な要因はカロテノイドの抗酸化作用です。
そこで、まずカロテノイドの抗酸化作用について見ていきます。
カロテノイドの抗酸化作用とは
抗酸化物質としては、
- ビタミンA
- ビタミンC
- ビタミンE
- ポリフェノール
- イソチアシネート
などがありますが、これに加えてカロテノイドも抗酸化物質としての働きをします。
特に一重項酸素という種類の活性酸素の除去にカロテノイドは大きな働きをします。
ここで酸化というのはどのような現象でしょうか。
鉄が酸化すると変色しもろくなり使い物にならなくなります。この現象と同じように、我々の体も参加する事で体にダメージが加わります。私達の細胞の代わりにカロテノイドのような抗酸化物質が酸化ダメージを肩代わりしてくれるのです。
カロテノイドによる健康効果はこの抗酸化作用が大事になります。
カロテノイドによる免疫コントロール、アレルギー抑制
酸化によって体が錆びていくと話をしましたが、我々の体は酸化をうまく利用して細菌の退治をしています。
私たちの体が酸化するとダメージを受けるように、細菌も酸化するとダメージを受けます。免疫を担当する細胞の一つである好中球は体内に侵入した最近を殺すために活性酸素を生産します。活性酸素は細菌を除去した後も、近くの細胞などを攻撃します。
そのため細菌を除去した後に速やかに活性酸素を取り除く必要があるのですが、ここで抗酸化物質であるカロテノイドが使われます。
さらに、β-カロテンなどのカロテノイドが免疫に関係する白血球やリンパ球の機能を高めたり増殖を促進したりする事が知られています。
また、カロテノイドにはアレルギー反応を抑制する効果あります。
花粉症、アトピー、食品アレルギー…などのアレルギーがあります。本来は無害な物質に免疫が過剰に反応してしまい炎症など起きる反応です。
上の図はキャロットジュースによるアレルギー抑制効果の実験です。水で飼育したマウスに比べ、キャロットジュースを与えて飼育したマウスはアレルギーになる処置を行わなかったマウスと同じ程度までアレルギーの発症が抑えられています。
これは、カロテノイドによってアレルギーに関わる細胞のバランスを整えられることが要因と考えられています。
カロテノイドによるがんの予防効果
細胞が酸化されてダメージを負うことによってその細胞をガン化しやすくなります。
そこで、抗酸化物質であるカロテノイドを摂取する事で細胞の酸化を防ぎ、細胞ががん化するのを抑制することが出来ます。
特に、リコピンやβ-カロテン、カプサンチンといったカロテノイドの効果が高いことが知られています。
一般的にカロテノイドはがん予防効果があると考えられているのですが、ここで真逆の実験結果がある事も紹介しておきます。
この実験では、フィンランドの男性喫煙者を対象にβ-カロテンを毎日投与したところ、β-カロテン非投与群に比べてβ-カロテン投与群の肺がん罹患率が18%上昇したという結果になり、実験はすぐに中止されました。
通称フィンランドショックと言われるこの事実により世界中が驚きました。
多くの条件が重なって肺がん罹患率が上がったと予想されるので、単純にβ-カロテンがガン化を引き起こすとは考えられないのですが、一つの成分を信仰する事の恐ろしさをこの研究は分かりやすく物語っています。
ただ、日常のβ-カロテンの摂取量では過剰摂取による健康被害が出るとは考えにくいので、体に良い効果の方が大きいと思います。
カロテノイドを効率的に摂取するための調理法とは
出典 : 食品と色
カロテノイドが多く含まれている食品には上記のようなものがあります。
ニンジンやカボチャはカロテノイドが多いイメージがありますが、他にもモロヘイヤや、春菊、ほうれん草もカロテノイド豊富な食材という事が分かります。
食材にカロテノイドが豊富に含まれていても、食材に含まれるカロテノイドが100%私たちの体に取り込まれるわけではないです。
一部のカロテノイドは体に取り込まず排出されてしまいます。そこで、適切な調理をしてカロテノイド吸収しやすく調理する必要があります。
カロテノイドを効率的に摂取するために大事な点をまとめました。それぞれについて詳しく見ていきます。
カロテノイドを効率的に摂取するために① 旬・熟した野菜を使う
上の図は、赤系とピンク系のトマトの栄養成分の経時変化についてです。
トマトが熟すにつれてリコピン濃度とカロテノイド濃度が上昇していることが分かります。
また、旬の食材の方が旬でない食材に比べて栄養素が豊富に含まれているという事が分かっています。
確かに、旬で十分に熟している食材の方が食べて美味しいと感じますし、見た目も美味しそうな見た目をしています。
カロテノイドに限らず栄養について考えるならまずは食材に注目すべきですね。
カロテノイドを効率的に摂取するために② 皮ごと調理する
にんじんに含まれるβカロテンは皮の近くが最も多く、中心にいくにつれ減少していきます。
また、かぼちゃに含まれるβ-カロテンは皮部分とワタの部分に多いです。
カロテノイドが抗酸化物質として働き、植物が紫外線からの防御のためにカロテノイドを使っていると考えたら外側に多く分布するのは当然の事と考えられますね。
にんじんやかぼちゃの皮は味が濃かったり触感が悪かったりと調理の際にむいてしまう事が多いです。しかし、カロテノイド摂取の点で考えたら皮つきのまま調理する事をおすすめします。
私はニンジンの皮の触感があまり好きではないので、皮は剥きますが、全部は剥かず半分くらい残したまま料理に使ったりします。
カロテノイドを効率的に摂取するために③ 油で調理する
カロテノイドは脂溶性という特徴を持っています。脂溶性とは油に溶けやすいという事です。
ビタミンCやポリフェノールが水溶性であるのと対照的です。
サラダを食べてもカロテノイドはあまり吸収されません。サラダを大量に食べたから今日は栄養を十分摂取している…と思っていてもカロテノイドは足りてないかもしれません。
食品に含まれるカロテノイドは体に吸収されにくいのですが、調理の際に油に溶解させることで吸収率が一気に上がります。
つまり、生のニンジンをポリポリ食べるより、野菜炒めにしたニンジンを食べる方がカロテノイドを摂取しやすいです。
加熱することで野菜のかさが減るので単純に摂取量が増えるというメリットもあります。
カロテノイドを効率的に摂取するために④ ドレッシングをかける
カロテノイドは脂溶性という話をしました。
ノンオイルドレッシングは別としてドレッシングには油分が多く含まれています。
油分と一緒にサラダを食べる事でカロテノイドの吸収率があがります。加熱した方が食材の細胞が壊れより吸収率が高くなるのですが…
カロテノイドを効率的に摂取するために⑤ ジュースにする
野菜をミキサーにかけ粉砕する事で細胞が壊れカロテノイドの吸収率が向上します。
生の野菜をミキサーにかけてジュースにする…それだけでも効果がありますが、野菜を茹でてからジュースにするとよりカロテノイドの吸収効果が高まります。
また、自分でジュースを作らなくても市販の野菜ジュースも売ってるのでカロテノイド含め栄養を野菜ジュースから摂取することは良い方法です。
まとめ
カロテノイドの健康への効果は高く期待されています。
ここで挙げたカロテノイドを効率的に摂取する方法はいつもはできないと思いますが、頭の隅においておくことでカロテノイドの摂取量が少しは上がると思います。
この記事ではカロテノイドに着目して書いてきましたが、カロテノイドだけに期待するのではなく、他の栄養素ももちろん大事ですので、やはり一番大切なことはバランスのより食事を心がけるという事になります。
コメント