麹の酵素の働きとは?なぜ肉が柔らかくなる?[図で解説]

食品科学
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を使った料理は健康によい。」

「麹の酵素が働く事で肉が柔らかくなる。」

塩麹などの麹関連商品を使った事がある人は一度は聞いた事があると思います。

麹の酵素と言われると健康に良さそうな感じがしますが、具体的に酵素はどのような働きをしているか考えたことはありますか。

この記事では、麹の酵素が食材にどのような働きをしてどのようなメリットが我々にあるのかを図で詳しく説明していきます。

目次

麹から生産された酵素の主な働きは4つ

麹菌からは数十、数百もの酵素が生産され、食品に作用していると言われています。肉を塩麴につけておくと肉が柔らかくなりますが、あれは麹という微生物自体の働きではなく、麹が生産した酵素の働きによるものです。

マルコメの生塩糀やハナマルキの液体塩こうじなどの商品がありますが、それらの商品の中には麹菌自体はほとんど生きていません。麹菌が生産した酵素が生きているのです。

そのため、塩糀をなぜ食品に使うのか考えるには麹菌が作り出した酵素の働きを知る必要があります。

麹菌が生産する酵素の中で特に重要な酵素が上の図に示したように4つあります。

  • タンパク質を分解する酵素
  • 糖質を分解する酵素
  • 脂質を分解する酵素
  • ビタミンを生産する酵素

それではこれらの酵素がどのような働きをしているのかもう少し詳しく見ていきます。

タンパク質を分解する酵素 プロテアーゼ

麹の酵素の一つ目の働きとしてはタンパク質を分解する働きがあります。タンパク質は肉や魚介類、豆類などに多く含まれている成分です。タンパク質は図に示すように複数のアミノ酸が一本に繋がってできた物質です。タンパク質を分解する酵素であるプロテアーゼはこの繋がりを切る事ができます。タンパク質が分解されるとペプチドやアミノ酸が生産されます。

ここでアミノ酸・ペプチド・タンパク質について少し解説します。これらは大きさが違うだけで成分は同じです。

アミノ酸 図の青丸一つ、タンパク質・ペプチドの構成単位
ペプチド 図の青丸2~50個程度
タンパク質 図の青丸50個以上

タンパク質が分解される事で次の様な効果があります。

  • グルタミン酸ナトリウムなどのうま味成分を生産する
  • タンパク質の消化・吸収を助ける
  • 肉を柔らかくする

塩糀を使って肉を柔らかくする能力を料理でどう使っていくかは塩糀の肉の漬け込み時間は?短くすることはできる?でも説明しています。

プロテアーゼ自体は玉ねぎやパイナップルなどの多くの食品に入っていますが、麹菌が生産するプロテアーゼの量は特に多いのです。

ペプチダーゼという酵素もあるのですが、それはペプチドを分解する酵素だからペプチダーゼと言います。タンパク質=プロテインを分解する酵素はプロテーゼと同じです。

糖質を分解する アミラーゼ

糖質を分解する酵素はアミラーゼと言います。

ご飯をよく噛んでい食べると口の中にほのかな甘みが広がりますが、それは口の中でアミラーゼが働くことでご飯のデンプンが分解され甘みを呈するブルコースに分解されるからです。

麹菌もこれと同じ事をしてせっせとグルコースを作り出しています。グルコースは多くの生物にとって必要なエネルギーの元なのです。

デンプンを分解するアミラーゼには多くの種類があります。

  • α-アミラーゼ
  • β-アミラーゼ
  • グルコアミラーゼ
  • α-グルコシダーゼ
  • イソアミラナーゼ
  • プルラナーゼ

このような複数の酵素が働くことで、より素早く、より効率的にデンプンを分解することができます。

そして、デンプンなどの糖質を分解することで次の様な効果があります。

  • 糖質の消化・吸収を助ける
  • 腸内細菌のエサとなるオリゴ糖を生産する
  • 食材の甘みを引き出す

ここまでは特に糖質の中のデンプンを分解する酵素について見てきましたが、糖質には食物繊維であるセルロースなどの成分も含まれています。麹菌はデンプン以外の糖質を分解する酵素も生産する能力があるらしいですが、食品に対しての働きはあまりなさそうです。どちらかというと、木質などのセルロース原料を̪資化する目的で研究が行われているそうです。

脂質を分解する リパーゼ

麹菌の酵素の働きの3つ目は脂質の分解です。脂質は図に示すように、脂肪酸とグリセロールという構成単位からなります。脂質を分解する酵素はリパーゼという酵素です。麹のリパーゼの食品への効果についてはあまり注目されておらず、どちらかというと工業的な利用が注目されています。衣料用洗剤のほとんどにリパーゼが入っており、人の油脂の分解に役立っています。それでも、食品への効果を見てみますと次のようになります。

  • 脂質の消化・吸収を助ける
  • 香りが付与される
  • 腸内細菌のエサとなる

ビタミンを生産する

麹菌の酵素の最後の働きとして、ビタミンの生産が挙げられます。これは単一の酵素の働きというよりは、麹菌全体の代謝によるものです。麹菌が自身の健康の為にビタミンを生産し、その後麹菌は死滅してもビタミンは残ります。塩糀などの製品にはそれらのビタミンが豊富に含まれています。

ビタミンの中でも特に、ビタミンB類・葉酸・ナイアシン・パントテン酸・ビオチンなどのビタミンを豊富に作り出します。

 

まとめ

いかがだったでしょうか。塩糀を料理に使っていたが、どのようの原理が働いていたのか詳しく理解していなかった…と言う悩みは解決されたのではないでしょうか。

麹菌は非常に多くの酵素を生産していますが、それはもともと麹菌が自身の生育に必要な物質を生産するために酵素を作っているのです。麹菌が必要とする物質と我々人間が必要としている物質がちょうどかぶっていて麹菌が作り出す生産物をうまく利用しているのです。

酵素の全体的な働きとしては、食品を分解する方向に進みます。食品が分解されると何が良いかというと、消化・吸収がしやすくなる事です。麹菌の働きとしてはこの消化・吸収のサポートが大きいと思います。

頑張り屋な麹菌そして、麹菌が生産した優秀な酵素経達の働きに感謝して、今日も肉を麹に漬け込みます…

コメント

  1. […] ヨーグルトや塩糀に含まれるプロテアーゼは微生物由来のものです。微生物はプロテーゼを始めとした多くの酵素を生産するため、微生物を使った作られたヨーグルトや塩糀などはよく料理に使われます。塩糀の酵素については麹の酵素の働きとは?なぜ肉が柔らかくなる?[図で解説]でも詳しく解説しています。 […]

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