低温調理した肉はなぜ柔らかい?大事なことは時間と温度だった…

食品科学
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最近よく低温調理という調理法を耳にします。

一昔前までは低温調理はレストランで使われ、一般家庭ではあまり使われていませんでした。

しかし、2010年代に入りAnovaやBONIQといった商品が登場し、低温調理が広まるようになりました。

低温調理をすることでを柔らかく調理することが出来るのですが、なぜ低温調理した肉は柔らかいのか考えたことがあるでしょうか。

今回は低温調理の科学について調べてみました。

目次

低温調理した肉はなぜ柔らかいのか?低温調理の科学

ローストビーフ、レバーのコンフィ、鶏ハム、サーモンのミ・キュイ…etc

低温調理の幅は広く、最近では肉や魚だけでなく、野菜の調理やデザート作りにも使われています。

まずは低温調理の原理について肉の繊維に注目して見ていきます。

低温調理とはどんな料理法?

低温調理とは、50℃~65℃の低温で長時間加熱する調理法です。

もともと料理人が低温で長時間する事で肉が柔らかくなるという経験から低温調理が研究されるようになりました。

この方法により、高温で調理した肉に比べ柔らかくなり、さらに、見た目もよくなります。

低温調理で大事な事は時間と温度のコントロールです。肉の魔術師たちはこの時間と温度を適切にコントロールする事で肉をより美味しく調理する事ができるのです。

肉の構造

肉は焼くと固くなる科学的な理由とは?柔らかくするための方法は?の記事でも肉の構造については書いていますがここでも軽く説明します。

肉の構成成分のうちタンパク質が多くな割合を占め、タンパク質が肉の固さに関係してきます。

肉のタンパク質は大別して筋繊維とコラーゲンがあります。筋繊維はミオシンとアクチンでできていて…というのは今回は簡単に話をするため書かないです。

肉を加熱した時、筋繊維とコラーゲンが収縮することによって肉が縮み固くなり、肉汁が漏れジューシーさが失われてしまうのです。

ここで、時間と温度をコントロールする事で、筋繊維とコラーゲンの縮みを減らす事ができるようになるのです。

 

低温調理の要 時間×温度

ここで、時間を横軸に温度を縦軸にとり肉の筋繊維とコラーゲンの状態を表します。

短時間高温調理は炒め物や焼き肉などが含まれます。長時間高温調理は豚の角煮や牛スジ煮込みなどの煮込み料理などが含まれます。

そして、右下の長時間低温調理が低温調理という調理法になります。低温調理はコラーゲンは分解され、筋繊維は縮まないという調理法です。

時間と温度について軸を一つに絞ってもう少し詳しく見てみます。

長時間加熱でコラーゲンが分解される

まずは横軸の時間について見てみます。

炒めもの(短時間)と煮込み料理(長時間)の違いですが、長時間調理する事でコラーゲンが分解するのです。

筋繊維とコラーゲンが縮むことが固さの原因であり、筋繊維が高温で加熱されることが肉の色を変える原因になります。

長時間高温で加熱した場合、筋繊維は安定な構造なためほとんど変化はないのですが、コラーゲンは分解されます。

コラーゲンによる縮みがなくなり肉は少し柔らかくなるのですが、まだ筋繊維による縮みがあり肉の固さに繋がります。

そこで、筋繊維が縮まないようにする方法が低温調理になります。

低温で調理することで筋繊維が縮まない

次は縦軸の温度について見てみます。

コラーゲンは分解されるが筋繊維が縮む高温長時間調理に比べ、低温長時間調理ではコラーゲンは分解され、かつ筋繊維は縮みません。

肉の筋繊維の変性(縮み)については多くの論文があるのですが、何℃以上になったら変性するのかはまだ議論の途中で、だいたい60℃~70℃以上の温度になると変性するそうです。

低温調理では60℃以上の設定をする事もありますが、そうすると筋繊維は変性します。しかし、低温長時間調理の場合の筋繊維の変性は固さにはあまり影響を与えないらしいです。論文でもその理由についてはまだ分からないところが多いとのことです。

だからこそ、低温調理の温度調整は難しく、経験値が必用になるのです。

 

低温調理の注意点とは?

低温調理は非常に優れた調理法ですが、気を付けなくてはいけないことが一つあります。それは雑菌の繁殖です。

一般的には30℃~40℃が最も雑菌が繁殖しやすいです。そのため、低温調理の温度設定が適切でないと雑菌の繁殖を促進してしまい食中毒の原因になります。

具体的には

  • 調理器具を丁寧に洗ってから使う
  • 新鮮な食材を使う
  • 適切な時間と温度を守る
  • 調理後は氷水で急冷する

などが大事になってきます。とにかく清潔を意識しましょう。

食材の調理時間と温度についてはBONIQの低温調理加熱時間基準表が詳しくまとめているので便利です。肉の種類と厚さによって詳細に設定されています。

これ以外にもBONIQホームページには低温調理のレシピだったり注意点だったりといろいろまとまっているのでかなり便利です。調理の際には参考にしてみて下さい。

 

まとめ

いかがだったでしょうか。低温調理で大事になるのは時間と温度のコントロールです。

適切な時間と温度を設定する事で肉の筋繊維とコラーゲンの縮みによる固さを最小限にします。

低温調理についてはまだ分かっていないことも多く、経験的にどうすれば肉を柔らかくする事ができるのか知っていた料理人のすごさが分かりますね…

参考資料

Low-temperature long-time cooking of meat: Eating quality and underlying mechanisms

BONIQホームページ

コメント

  1. […] ヘモグロビンやコラーゲンなどの単語は聞いた事があるのではないでしょうか。筋原線維タンパク質のミオシンとアクチン、肉基質タンパク質のコラーゲンに注目した低温調理した肉はなぜ柔らかい?大事なことは時間と温度だった…という記事も書いているのですが、今回は筋漿タンパク質のミオグロビンに注目して記事を書いています。 […]

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