お茶漬けには「お茶」か「お湯」か論争というものがあります。
皆さんはどっちでしょうか。
お茶漬けといったら永谷園の”お茶漬け”が有名ですが、永谷園の公式のホームページのQ&Aには次のような回答があります。
永谷園の「お茶づけ海苔」には抹茶が入っていますので、熱いお湯をお使いいただくと抹茶本来の風味がほどよく引き立ちます。
お好みでお茶をかけていただいても結構ですが、ぜひ一度お湯をかけてご賞味ください。
一部の「お茶づけ」には抹茶が含まれていない商品もありますが、それぞれ風味がついておりますので、お湯でご賞味いただくことをお勧めいたします。引用 : 永谷園
製造元が言っているのだからお湯が正しいのでしょうか…
しかし、
- 抹茶が入っていなかったらお湯じゃない方がいいのか
- インスタントのお茶漬けの場合はお茶の方がいいのか
- 出汁をかけるのはどうなのか
などの疑問が湧いてきます。そこで、お茶漬けには「お茶」か「お湯」か、科学的な理由を調べてみました!!
目次
お茶漬けには「お湯」それとも「お茶」?
お茶漬けには「お湯」か「お茶」か論争…
それでは両者の主張をはじめに見てみましょう。
お茶漬けはお湯派
①お茶碗にご飯を入れます
②塩昆布・梅干し・海苔等それっぽい具を入れます
③鰹節を入れてお湯を注ぎます
④美味しいお茶漬けもどきになりますおいしいです
— ちよくまはバーナー(ためゆる会長) (@Chiyokuma_) August 10, 2020
永谷園のお茶漬けすごいよな お湯注ぐだけで最強のご飯になるもんな 技術の結晶
— 細野 (@hsn3o_lgrs) August 10, 2020
お湯派の側の主張としては、永谷園がお湯を使うと言っている…と言うのが大きいですね。また、永谷園の商品以外のお茶漬けでもお茶ではなくお湯を使うと主張している人も多い印象です。
お茶漬けはお茶派
お茶漬けにお茶を入れるの、好きだけどあまり人に言えない感がある(邪道な気がして心配)
— 〚β版〛やまっぺ (@Yamappe0228) August 6, 2020
お茶漬けにはお茶かお湯か、というディベートを中学の時にやったのだが、お茶漬けってよりお茶かけよなで終わってしまったのが悔やまれる。ちなみに当時の永谷園のお茶漬けの説明欄にはお湯を注げとマニュアルがあったようだ。さてこれ正解はどうなのだろうか。
— ゆぅちんはボンクラバイク乗り (@u__bike) August 9, 2020
暑い夏には冷やしたお茶かけて食べるお茶漬けいいです。
毎日の弁当作りに悩みます(笑)— Mikann@頭痛が痛すぎる毎日。 (@Mikann4533) August 6, 2020
お茶派の主張としては、お茶漬けと書いてあるからにはやはりお茶を入れるでしょ…というのが大きいです。また、夏場は冷たいお茶を注いでササっとかきこむスタイルも多いです。
あー、お茶漬け食べたくなってきますね…
科学的に見たらお茶漬けには「お湯」か「お茶」か?
お茶漬けに「お湯」を使うか「お茶」を使うか論争は、最終的には好みの主張になるのでどっちが正しいということもないです。
しかし、科学的に考えて本当に美味しいお茶漬けを追求したら、「お湯」を使うべきか「お茶」を使うべきかという論争に結論が出ます。
科学的根拠について考えてみましょう。
お茶漬けにはやはりお茶の成分は必要?
永谷園の答えに次の様な一文があります。
永谷園の「お茶づけ海苔」には抹茶が入っていますので、熱いお湯をお使いいただくと抹茶本来の風味がほどよく引き立ちます。
引用 : 永谷園
ということは、逆に抹茶が入っていなかったら、お茶を使った方がいいのでしょうか?
お茶の成分が入っていることでお茶漬けがより一層美味しくなるのでしょうか?
これについて、伊藤園が行ったお茶の効果についてのレポートが参考になります。
お茶によってうま味が引き立てられる?
参考 : 伊藤園 「お茶」と「出汁」、うま味の相乗効果 ~和食の味わいを引き立てる“お茶のうま味成分”~
お茶漬けにお茶の成分が必要であるとしたら、お茶の成分がお茶漬けをより一層美味しくする効果があると予想されます。そこで、お茶の効果について調べてみると2018年に伊藤園がお茶のうま味成分についてのレポートを出していました。この論文についてみていきます。
お茶には健康成分である「カテキン」や「カフェイン」などに加え、うま味成分である「グルタミン酸」や「テアニン」が入っています。普段飲んでいるお茶にうま味を感じるを感じる事は少ないかもしれませんが、お茶にはうま味成分が入っています。玉露は味の素の味がする…と言う人がいるくらい、うま味の濃いお茶ではうま味をはっきり感じる事ができます。
うま味についてはうまみ調味料「味の素」の成分「グルタミン酸ナトリウム」は安全?でも詳しく解説しています。
うま味には相乗効果というものがあります。これは、複数のうま味を持った食品はうま味の足し算ではなく掛け算が起き、うま味が合わさることで美味しさが急増するというものです。お茶に含まれているうま味も同様の効果を示すことがレポートから分かります。
- お茶のみ
- かつお出汁のみ
- お茶+かつお出汁
レポートでは三種類のサンプルを用意しうま味の強さを評価した実験のデータが記載されています。この実験では、お茶のみとかつお出汁のみに比べ、お茶+かつお出汁のうま味が飛躍的に増加している事が分かります。このレポートでは特にお茶の中に含まれるうま味成分「テアニン」の効果に注目しています。
つまり、永谷園のお茶漬けに含まれている抹茶成分はうま味を強化するために含まれているものと考えられます。ですので、抹茶成分の含まれていない、自分で作るお茶漬けにはお茶を使う方がいいかもしれません。
お茶漬けには出汁のうま味も必要?
お茶漬けには、お茶の成分である「テアニン」が美味しさに寄与するという事が分かりましたが、お茶漬けには出汁をかける場合もありますよね。永谷園のお茶漬けに出汁をかける…と言う人はあまり聞いたことがありませんが、自分で作った鯛茶漬けや鮭茶漬けには出汁を使う…と言う人は多いと思います。
それでは、どんな時にお茶漬けに出汁を使ったらいいのでしょうか。
お茶漬けの美味しさに関係するうま味には次の様な物がありあます。
- 昆布などに多く含まれる「グルタミン酸ナトリウム」
- かつお節などに多く含まれる「イノシン酸ナトリウム」
- お茶に含まれる「テアニン」
昆布だしの場合はグルタミン酸ナトリウムが多く含まれ、かつおだしの場合はイノシン酸ナトリウムが多く含まれます。そして合わせ出汁の場合には両方のうま味が多く含まれます。これらのうま味はお茶由来のうま味より強いうま味です。そのため、お茶漬けによりうま味を感じたいときには出汁茶漬けを選択して、今日はさっぱりとしたお茶漬けを食べたいという時にはお茶をかける、という選択が良いと思います。
お茶に含まれているテアニンはイノシン酸ナトリウムと大きな相乗効果を示すと上記のレポートで分かっています(テアニンの構造はグルタミン酸の側鎖にN-エチルアミンが結合した形なのでグルタミン酸ナトリウムに近い味覚を示すのではないかと私は予想している…)。イノシン酸ナトリウムは魚介類に多く含まれているうま味成分なので、うま味の強い魚介類を具として使う場合は出汁を使わなくても、お茶だけで十分なうま味を感じる事ができると考えられます。
ちなみに、永谷園のお茶漬けの成分表示に調味料(アミノ酸等)というものが書かれていますが、これは恐らくグルタミン酸ナトリウムやイノシン酸ナトリウムのようなうま味成分が多くを占めていると考えられます。そのため、お茶漬けの素をかけるだけで、イノシン酸ナトリウム由来のうま味と抹茶成分由来のテアニンのうま味を味わう事ができ、お湯をかけるだけで美味しいお茶漬けを楽しむことができるのです。
さすが長年愛されている商品はよく出来てますね…
ほんだしとお茶を使ったお茶漬け
お茶漬けには成分だけで考えると、魚介類に多く含まれるイノシン酸系のうまみとお茶に含まれるテアニンといううま味が合わさることで、より美味しく頂けます。(出汁由来のグルタミン酸ナトリウムも大きく影響しているとは思う。)
もし、家に永谷園のお茶漬けがない…しかし、美味しいお茶漬けを食べたいという場合には、ほんだしや塩昆布などを利用するのがおすすめです。これらの商品はうま味の濃縮物です。ここにさらにお茶や、お茶の粉末を合わせることでうま味の相乗効果で、それだけでお茶漬けが美味しくなります。そこに、好みの具材をのせていただきましょう。
結論
お茶漬けには「お湯」か「お茶」か論争の結論としては、
- 永谷園のお茶漬けにはお湯で十分
- 自分でお茶漬けを作る場合にはお茶や出汁を使いうま味を引き出す
という事になります。
ここまでつらつらと小難しい事を言ってきましたが、最終的には好みの問題になるので、好きな食べ方で食べるのがいいでしょう。この記事では、ただ科学的に見たらどうかという事を述べたにすぎません。
上記に示した、伊藤園のレポートには他にも面白い内容が書かれていて、お茶を食事前に飲むことでお茶のうま味成分や苦み成分である「カテキン」などによって、その後の食事の味わい方が変わってくるというような内容も含まれていて非常に興味深いです。もし、興味がありましたら、参考資料のリンクから見に行ってみてください。
参考資料
伊藤園 「お茶」と「出汁」、うま味の相乗効果 ~和食の味わいを引き立てる“お茶のうま味成分”~
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