尿酸値を下げる!「サッポロうまみ搾り」アンセリンの効果とは?

うまみ搾り 食のコラム
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2020年6月23日、サッポロビール㈱が機能性表示食品のノンアルコールビールテイスト飲料である「サッポロ うまみ搾り」の発売を全国で始めました。この商品の一番の売りは、アンセリンという物質が尿酸値を下げる働きがあるという点です。「高い尿酸値に悩んでいるが、ビールは好きでやめられない…」というような人でも、うまみ搾りを飲めば本当に尿酸値を下げる事が出来るのでしょうか。
この記事では、アンセリンがどのように機能して尿酸値を下げるのかについて生化学的な視点から見ていきます。

 

 

ノンアルコールビールの流行

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キリンビールが2009年にノンアルコールビール「キリンフリー」を発売して以来、ノンアルコールビールの売り上げは年々伸びています。一昔前まではノンアルコールビールは美味しくない…という声が多かったのですが、最近は製造技術が発展し、普通のビールに負けない位美味しいノンアルビールが販売されています。そして、ただノンアルで美味しいというだけでなく、機能性を持ったノンアルコールビールも注目されています。

  • 「サッポロプラス」 難消化性デキストリンが糖の吸収を穏やかにする
  • 「アサヒヘルシースタイル」 食後の血中中性脂肪の上昇を穏やかにする
  • 「キリン カラダFREE」 熟成ホップ由来苦味酸がお腹回りの脂肪を減らす
  • 「サントリー からだを想うオールフリー」 ローズヒップ由来ティリロサイドが内臓脂肪を減らす

これらの機能性ビールは糖や脂肪の吸収を抑える効果を持つビールでした。そして今回サッポロが発売した「サッポロ うまみ搾り」は尿酸値を下げるという新しい機能を持ったビールになっています。

サントリーが2019年に行ったノンアルコール飲料レポート[1]では、ノンアルコールビールをより頻度高く飲む人は、美味しさや健康面への効果を期待してノンアルコールビールを選択しているとというデータを示しています。ノンアルビールの月1回以上飲用者からアンケートを取った結果が次のようになります。

  1. アルコール飲料と味が遜色ないから (29.2%)
  2. 車を運転したから (27.2%)
  3. 明日の予定に響くから (25,2%)
  4. 加齢により健康が気になるため (24.4%)
  5. 体の脂肪が気になるから (17.2%)
  6. 肝臓の数値が気になるから (14.8%)
  7. アルコールが苦手だから (14.5%)

ノンアルコールビールに健康向上の効果を求める消費者が多いですが、機能性を持ったノンアルコールビールはどの程度の効果があるのでしょうか。この記事では最近発売された「サッポロ うまみ搾り」に配合されていて、尿酸値を下げる効果が期待されるアンセリンという物質がどれだけの効果を持つのか、について見ていきます。

 

アンセリンの効果

アンセリンとは|新しい機能性素材アンセリン

サッポロの「うまみ搾り」のホームページを見るとアンセリンという物質が尿酸値を下げるということが強調されています。このアンセリンというのはどのような物質で体にどのような働きをするのでしょうか。アンセリンの生化学について見てみましょう。

アンセリンとは

アンセリンとはβ-アラニンとメチルヒスチジンからなるジペプチドのことです。β-アラニンとメチルヒスチジンはどちらもアミノ酸で、アミノ酸が数十個、数百個繋がると肉や魚、大豆などに多く含まれるタンパク質を構成します。アンセリンはカツオやマグロなどの魚類に多く見られる成分で、尿酸値の低下を始め、疲労回復や抗炎症作用などの多くの機能が期待されているペプチドです。

今回「うまみ搾り」を発売したサッポロビール㈱はアンセリンが尿酸値の低下に効果があると唄っていますが、これはある一つの論文を根拠としています。「うまみ搾り」は機能性表示食品であり、機能性表示食品を名乗るためには学術論文などの科学的根拠を消費者庁に提出する必要があります。

この根拠となっている論文でアンセリンの効果が立証されていれば、安心してアンセリンが尿酸値を下げる効果があると言えますが、サッポロビールはこの論文についてあまり詳しく触れていません。この論文にはどのような事が書かれているのでしょうか。

サッポロビールが根拠としている論文とは

サッポロビールが根拠としている論文を探すには消費者庁の機能性表示食品の届出情報検索のページを使います。160報のアンセリンに論文から条件に合わない論文を除外して、ただ一つの論文を根拠としています[2]。この論文では80名の疾患に罹患していない成人男女を対象とし、12週間アンセリンを摂取する実験を行いました。実験は被験者をアンセリン入り食品摂取群(試験群)とアンセリン非摂取群(コントロール群)の二つに分けて行いました。アンセリン摂取前、4週間後、8週間後、12週間後に血清尿酸値を計測した図を下に示しています。この結果から、試験群ではアンセリン摂取によりコントロール群に比べ血清尿酸値が優位に低下していることが分かります。
優位に低下しているというのは、統計学的に見て低下しているということで、統計学に基づいたアンセリンの効果を示します。

そもそもなぜ尿酸は体によくないのか?

焼津水産化学工業

尿酸とは痛風の原因となる物質です。体内の尿酸濃度が増加することで尿酸が血液中に溶けきれなくなり、不溶性の結晶(結石)が析出します。この結晶を人の白血球などの攻撃することで炎症が引き起こされ痛みに繋がります。炎症の発生は主に関節や尿道、腎臓などで起き激痛を伴います。痛風患者は1000人中約3人であり男性に多いです。
痛風の原因となる尿酸がどれだけ体内に蓄積されているかは血清中の尿酸値を測定することで分かります。尿酸値が7.0mg/dL以上であれば高尿酸血症と診断され、痛風だけでなく、尿酸値が高いことで腎不全や心筋梗塞、高血圧などの多くの疾病にかかりやすいことが分かっています。

尿酸はプリン体という物質から作られます。プリン体とはプリン環という構造を持った化合物の総称で、エネルギー物質、遺伝物質、情報伝達物質などの構成成分として人の体に必須な物質です。プリン体は食事から摂取する場合と、体内で合成される場合がありますが後者の量の方が圧倒的に多いです。よく、尿酸摂取量を減らすためにプリン体の少ない食事を推進されますが、体内での合成量を減らす方が大事になります。特に日本ではビールにプリン体が多いというイメージをもっている人は多いと思いますが、他の食べ物に比べてビールが特に多いということはありません。プリン体は魚類や肉類のうまみ成分でありプリン体の入っている食べ物を美味しいため、お酒が入っているとついつい食べ過ぎてしまいます…「うまみ搾り」の”うまみ”というのはこのプリン体の旨味から来ているのだと思います。

体内に蓄えられる尿酸の量は決まっていて、尿酸プールというものがあります。尿酸プールへの過剰な尿酸の供給または、尿酸プールからの尿酸の排出減少により、体内の尿酸濃度が増加します。アンセリンは尿酸の供給量を減らすという効果があります。それでは、尿酸がどのように働くことで供給量をコントロールする事が出来るのでしょうか。

アンセリンによる尿酸値調整機能とは?

プ リンヌクレオチ ド生合成経路の代謝調節機構[3]

尿酸は上記のような代謝経路でAMP、IMP、GMPなどのプリン体から生成されます。プリン体は通常プリン体から尿酸の方向へ、図で言えば下の方向へ反応が進みます。しかし、HPRT(ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ)という酵素が関わる逆向きの反応(サルベージ経路)もあります。アンセリンはこのHPRTの生成を増加することが分かっています。そのため、アンセリンを摂取するとサルベージ経路が促進されて、尿酸の生成量が低くなるという仕組みです。

アンセリンは安全な物質?

アンセリンの尿酸低下の効果は確かであるという事が分かったと思いますが、アンセリンは人体に無害な物質なのでしょうか。「うまみ搾り」で使用しているアンセリンは魚類を原料として製造されています。マグロやカツオなどのアンセリンを多く含む魚類は昔から食べられていて、「うまみ搾り」に含まれているアンセリン量50mgはマグロ・カツオの4-8 g に相当する量であり、日常生活における摂取量の範囲内であると考えられます。

また、アンセリンをサプリメントは既に発売されていますが、健康被害は報告されていません。[4]ただし、抗癌剤ドキソルビシン(アドリアマイシン)を使用している患者はアンセリンと相互作用する可能性が指摘されているのでアンセリン摂取の際には十分気を付けましょう。

 

まとめ

機能性表示食品データベースというサイトでは機能性表示食品についてまとめてあり、アンセリンを使用した商品が次々と申請されていることが分かります。これらの商品は全てこの記事でも紹介した一つの論文を根拠としてアンセリンに効果があると示しています。根拠となる論文が一つだけというのは非常に信頼性に欠けます。さらに、この論文では毎日「うまみ搾り」一缶分のアンセリンを摂取することで尿酸値低下の効果を示しています。もし、「うまみ搾り」を飲んで尿酸値の低下を目指すのであれば、毎日一缶しかも4週間以上継続して飲む必要があるということになります。

「うまみ搾り」に尿酸値を下げる効果は確かかもしれませんが、企業の”尿酸値を下げる働きがある”という謳い文句に踊らされず、健康な食生活をすることの方が重要となります。

 

参考文献

  1. ノンアルコール飲料に関する消費者飲用実態・意識調査 サントリー ノンアルコール飲料レポート2019
  2. 久保村大樹. アンセリンの健常者に対する継続投与時の血清尿酸値に及ぼす効果と安全性の検討. 応用薬理 dyoYakuri Phannacometrics 94 (3/4) 37-42 (2018)
  3. プ リンヌクレオチ ド生合成経路の代謝調節機構 GoutandNucleicAcidMetabolismVol.25No.2(2001)105

 

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