ビタミンC足りてますか?
ビタミンCは我々の体に必須なビタミンの一種です。ビタミンCの効果は多く知られており、抗酸化作用やコラーゲン合成などがあります。
しかし、食材中のビタミンCは調理や保存の条件で量が変化していきます。
それでは効率よくビタミンCをとるにはどうするればいいのでしょうか。
今回はビタミンCの安定性について調べてみました‼
目次
ビタミンCの基本的な性質
ビタミンCは我々の体の機能維持に必須ですがどのような効果があるのでしょうか。また、ビタミンCはどのような食品に多く含まれているのでしょうか。
ビタミンCの安定性について見る前に、ビタミンCの基本的な性質について見ていきます。
ビタミンCは酸化を防ぐ
ビタミンCは水溶性のビタミンの一つで、正式名称はアスコルビン酸と言います。アスコルビン酸の主な働きには次の様な物があります。
- 抗酸化作用
- コラーゲンの合成
- ドーパミンの合成
- 鉄イオンの吸収を助ける
ビタミンCの構造式は下の図のようになります。左が還元型のビタミンCで右が酸化型のビタミンCです。生物は酸化のストレスに常にさらされていて、酸化することで体が劣化していきます。そのため、ビタミンCを変わりに酸化することで酸化ストレスに対処しています。ビタミンEも抗酸化剤の一種ですが、ビタミンEは脂溶性で脂肪の酸化を防ぐことができます。酸化型になったビタミンEは還元型のビタミンCと反応することで還元型のビタミンEを再生することができます。
また、ビタミンCはコラーゲンの合成を助ける働きをします。コラーゲンは我々の体のたんぱく質の1/3を占めるほど多く存在し、コラーゲンが不足すると毛細血管からの出血や骨がもろくなったりします。
コラーゲン欠乏症で体がもろくなる壊血病という病気があります。これはワンピースでも出てきますよね。船で長旅をする場合、新鮮な野菜や果物が不足するため十分なビタミンCを摂取することができないことが原因です。ゴーイングメリー号にはみかんが植えてあったのですが、あれは壊血病予防に有効的な手段ですね…
ビタミンCが多い食品とは
参考 : 文部科学省 食品成分データベース
文部科学省が食品の栄養成分についてのデータを公開している「食品成分データベース」というサイトがあります。上の図はそこのデータから上位10位のうち主要なものをピックアップしました。
図を見てもらうとわかると思いますが、これは100 g当たりのビタミンC量なので乾燥パセリや焼きのりのビタミンC量は多いですが、これだけの量をとるのは現実的でないですね…
やはり、ビタミンCは野菜や果物に多いようです。また、イモ類や緑茶、さらにはレバーのような動物性食品にも多く含まれています。特に、イチゴやキウイ、パプリカ、ブロッコリーなどの食品多く含まれています。
ビタミンCの量の比較でよく出されるレモンにも100 g あたり約50mg と多くのビタミンCが含まれていますが、レモンも摂取量を考えたら野菜に比べてレモンから必要なビタミンCの大半をとるのは難しそうです。
ちなみに、一日のビタミンC摂取推奨量は85 g となっています。
ビタミンCの効果はいつまで続く?新鮮なうちに食べるべき?
ここまででビタミンCの基本的な情報について見てきました。
ビタミンCは野菜や果物を収穫してから私たちの食卓に並ぶまでの間に損失があります。その損失は時間や温度、またはpHなどの様々な条件で変わります。また、調理の際の加熱や水洗いなどの条件でもビタミンC量は変わってきます。それでは食材をどのように扱ったらビタミンCの損失を最小限にすることができるのでしょうか。
この章ではビタミンCの安定性について見ていきます。
ビタミンCは時間とともに分解されていく?
食材中のビタミンCの残存量について様々な条件で検討している論文があります。滋賀大学の林宏子さんが行った食品中のビタミンCの安全性に関する基礎的検討という論文の中で次のようなデータがあります。この実験では野菜や果実から搾った液を8℃で保存し、アスコルビン酸残存量を計測しています。
グラフについていくつか説明します。このグラフの横軸は時間で、縦軸はビタミンC残存量です。つまり、時間経過によってどれだけのビタミンCが減少したか、いくつかの食品で検討しています。次に、還元型と酸化型についてですが、これは先ほど説明したようにビタミンCの構造を表します。体の中で働くのは還元型のビタミンCですが、酸化型のビタミンCも摂取後に還元型のビタミンCに変換されるので、還元型と酸化型の機能は同等とみて問題ありません。また、DKGというのは2,3-ジケト L-グロンサンといって、ビタミンCが分解されたときに生じる物質であり、この量が多いということはビタミンCが分解され抗酸化作用を示さない状態になっている事を示します。
この図を見ると、一般的にビタミンCが多く含まれていると言われているレモンやキウイなどではビタミンCの残存量が多く、DKGの増加が少ないと分かります。
ピーマンやブロッコリーではビタミンCの減少とDKGの上昇が見られます。これらの野菜では酸化型のビタミンC量の割合が増加していますが、ビタミンC全体でみるとレモンやキウイに比べ大きく減少しているわけではないと分かります。
これらの結果より、どんな果物や野菜でも量に違いはあるが時間がたてば食材中のビタミンC量は減少することが分かります。やはり、取れたてが一番なんですかね…🍋🍎🍇🥒🥕🍆
ビタミンCは加熱しても分解されない?
ビタミンCの熱安定性についても上記の論文で紹介されています。
この実験では食材から抽出した液を100度で熱し、その食材中のビタミンC残存量を計測しています。図から見て分かる通り、結果は大きく二つに割れました。
加熱しても残存量が多かった食材はレモンやダイコンであり、ビタミンCに熱に対する安定性が予想されます。一方、加熱したことで、ビタミンC残存量が大きく減少した食材もあります。この原因としてビタミンCを分解するアスコルビン酸オキシダーゼという酵素の存在が考えられます。酵素が最も機能する37℃付近でビタミンCの大幅な減少が見られるからです。
したがって、ビタミンC自体は熱に対して安定ですが、食材によってビタミンCを分解する酵素が含まれているため、加熱することでビタミンCの減少が促進されてしまうという事がわかります。
それなら、一瞬で100℃まで加熱したらどうなるのだろうか…などと私は考えてしまします…100℃まで一瞬で加熱して酵素を失活させたら、ビタミンCの減少を抑えられるのではないか…でも、家庭の調理設備だと無理がありそうですね…
切った野菜を水に浸しておくとビタミンCが減少する?
参考 : 女子栄養大学 栄養のなるほど実験室
ビタミンCは水溶性ビタミンであり、野菜や果物を水に浸しておくことで水の中にビタミンCが流失してしまうのではないかという事が考えられます。
ここで栄養のなるほど実験室という本の中で、千切りキャベツの水に浸した時間でのビタミンCの残存量の違いについて実験したデータがあります。
- 切ったまま : 100%
- さっと水に通す : 86%
- 15分水に通す : 84%
- 30分水に通す : 80%
キャベツを千切りにし、細胞を破壊することでビタミンCが流出しやすくなり、水に浸す時間に比例してビタミンCが流出することが予想されましたが、結果は一度水に浸すとビタミンCが流失しますが、それ以降の流出はほとんどないという結果になりました。
栄養だけを見ると切ったまま食べるのが良いですが、やはり一度水通しした方がシャキシャキとした触感もあり、官能評価でも水通ししない場合に比べ評価が高いです。
そのため、千切りキャベツにおいては水通しをしてたべてもビタミンCの流出が大きくはないので、味を大事に水通しする方が良いと感じます。
まとめ
いかがだったでしょうか。ビタミンCの計測方法は日々進化しているそうで、昔はビタミンCが含まれていないと考えられていた食材でも今はビタミンCが含まれているというデータもあるそうです。
適度に野菜や果物をとっていればビタミンCが欠乏することは早々ないと思いますが、ビタミンCの科学を頭の隅に入れておけばいつか役に立つかもしれません。
ビタミンCは調理や保存方法で残存量が大きく変化するのですが、一番大事な事は新鮮であることだと思います。どんな食材でも時間が経つとビタミンCが失われてしまうのでスーパーで買った食材は早めに食べましょう。
参考資料
講談社 エッセンシャル 食品科学
女子栄養大学出版部 女子栄養大学 栄養のなるほど実験室
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